【ネタバレ感想】第1回おいしい文学賞受賞!「縁結びカツサンド」

小説

美味しいもの大好きな私の心を掴む、なんとも美味しそうなカツサンドのイラストが目を引く表紙です。

なんと著者のデビュー作!

ポプラ社の「第1回おいしい文学賞」の最終選考作品となり、惜しくも受賞にはならなかったものの書籍化となりました。

結婚、就活、受験、仕事。
「パン」と「縁」をキーワードに4話からなる連作短編集です。

中心にあるのは「ベーカリー・コテン」。
店主は悩める三代目・和久。
そして訪れるのも何らか悩みを抱えた人たちです。

独身OLの私が共感したのは第一話と第二話。
「これでいいのか?」と、特に仕事で悩んでいるときにおすすめの一冊です。
悩んだり迷ったり疲れたり、そんな時に助けてくれるのは「おいしいもの」だと思っています。

一つのパンが気持ちを救ってくれることって大いにあるはず。
ぜひパンとコーヒーをお供に読んでみてください。

【作品情報】
著者:冬森灯(ふゆもり とも)
装丁:須田杏菜
装画:伊藤絵里子
出版社:ポプラ社

ポプラ社の「第1回おいしい文学賞」
「おいしい文学賞」は『食堂かたつむり』(小川糸さん)、『四十九日のレシピ』(伊吹有喜さん)、『真夜中のパン屋さん』(大沼紀子さん)など数々の「おいしいもの」が登場する名作を刊行してきたポプラ社が創設した短編小説の賞です。
2017年に第1回を開催しました。
第1回の受賞作は白石睦月さんの「母さんは料理がへたすぎる」です。
(引用:ウィキペディア)

あらすじ

駒込うらら商店街に佇む、昔ながらのパンやさん「ベーカリー・コテン」。
あんぱん、クリームパン、チョココロネ。
気取っていない顔が並んでいて、見ているだけでほっとするような、そんなお店。

一家で経営してきたコテンの未来を背負うのは、悩める三代目・和久。
商店街が寂れる中で、コテンを継ぐべきか。
「自分なりのパン」を見つけないといけないのではないか。

創業者のじいちゃんが亡くなって、店名の「コテン」の由来もわからない。

日々迷いながらパン生地をこねる和久のもとには、愉快なお客たちがやってくる。
ヒョウガラのコートを着込む占い師に、就活に落ち続ける学生。肉屋のバカ息子。

人の悩みに寄り添うパンを焼こうと奮闘する和久が、やがて見つけた答えとは。
しぼんだ心を幸せでふっくらさせる、とびきりあったかな縁の物語。

第一話 まごころドーナツ
第二話 楽描きカレーパン
第三話 花咲くコロネ
第四話 縁結びカツサンド

※この先ネタバレを含んでいるためご注意ください。

特に共感しまくりの第一話・第二話!

第一話

第一話は多くの女性にとって入り込みやすいストーリーだと思います。
銀行で働くOL・理央は、つきあっている彼との結婚式を急いでいますが、その理由は意外なものでした。

「こんなにおいしそうにごはんを食べる人は見たことがない」
「長い人生、ずっと向き合って食事をしていくなら、こういうひとと一緒がいい」

という彼氏の秀明。

それはまさに私の理想でもあります。
一緒にごはんを食べる人もそうであってほしいし、自分もそうでありたい。

結婚式を挙げることに夢中になっていて、そんな素敵な彼氏を置いてきぼり気味の印象だった理央は、最初あまり好きな感じではありませんでした。

でも、結婚式を急ぐのに理由があったこと、サバサバ・シャキシャキしているのは性格なんだなということが分かり、章の終わりには大好きなキャラクターになっていきました。

仕事もしっかりしていて、和久にかける言葉も素敵です。
理央との会話で五円玉からインスピレーションを得たドーナツは「まごころドーナツ」と名付けられました。

そういわれると、ドーナツってなんだか縁起がよさそう。

じいちゃんの店と味をまもらなくちゃいけない、でも今のままではだめだ。
最初は家を継ぐことを拒否しフランス料理の道へ進んだものの、店を継ぐことを決めパンの世界へ入った和久。

私もどちらかというと一人で抱え込んでもんもんと悩んでしまうタイプです。
でも、こうやって人と話すことによって、人の意見を聞くことによって、今まで自分の中になかった考えが生まれることってありますよね。

これからはドーナツを見るたびに五円玉を思い出しそうです。
ドーナツの穴から覗けば、私も先が見通せるかな?

第二話

二話目の主人公は就活に悩む大学4年生の青年・大和。
働く私としてはもう一つすごくお気に入りのエピソードです。

面接に落ちまくる大和に自分の心もなんだか痛くなってしまうのは、多少なりともその経験があるからでしょうか。

大和はやりたいことがあったはずなのに、面接に落ち続けた結果、「受かること」が目的になってしまいます。
やりたいこと、自分の味を探してもがくのですが、なかなかうまくいきません。

周りの友達がうまくいっているように見えてしまうのもすごく分かります。
だんだん自分に価値がない気がしてきますよね…。

そしてこのお話でキーとなるパンは「カレーパン」。
「カレーは恐ろしい食べ物」という和久ですが、確かにカレーといわれて想像する味は一人ひとり違うと思います。

昔、職場の人に「あなたの家のカレーはどんなカレー?」ってきいてまわったことあったなぁ…と思い出しました。(ちなみにその時に激押しされたのは納豆カレーでした)

「手軽に食べれて驚きがあるごはんを買ってきて」

バイトにきたデザイン事務所でのそんな注文に大和が買ってきたのはコテンのカレーパン。
大量のカレーパンを目の前にがっかりする事務所の人たちでしたが、実は見た目はただのカレーパンですが食べたら中はお楽しみ!いろいろなカレーが入っていたのです。

何それ楽しすぎる!
グリーンカレー入りのカレーパンとか食べてみたい…!

美味しいものは共通の話題になり、大和はこれをきっかけに、正社員ではないけれどやりたいことを見つけて居場所を作ることができました。

小さくてもいい、未来へつながる一歩を踏み出そうと思えるお話です。

作中に素敵な言葉があふれまくり!

みんなが悩んで、話して、自分の新しい考えにたどりつく…というストーリーということもあり、作中には煌めく名言がたくさん出てきます。

どれもメモしたい!と思う言葉ばかりです。
いくつか備忘録的にご紹介します。

「ひとの真ん中って言ったら心なんでしょうが、自分の心だって、目には見えないですよね。でも、お互いに見えないからこそ、少しでも相手の立場に立って考えてみようって努力するでしょう。それがひととひとをつないでいくのかなって」(和久)

「自分がおいしいって思う、目指すものがわかっているんだもの。その先に、あなたのパンが見つかるんだと思います。一足飛びに理想には届かないかもしれないけれど、小さな一歩から、踏み出してみたら?」(理央)

「目に見えないからこそ、努力しようとするんだよ。少しでも先が見通せるように。
その先が、望む未来につながっていくように」(秀明)

「いい仕事ってさ、いいメシが作るんだよね」(親方)

「当たり前なんて、その時々で変化していくものだ。だからこそ、時が流れても変わらない心の軸を大切にしながら、時代に合わせていくやり方があってもいい」(音羽喜八)

出典:縁結びカツサンド(冬森灯)

これ以外にも、「ほんとそれ!」と思う言葉がたくさん出てきます。
ぜひ読んでチェックしてみてください。

感想・まとめ

美味しいごはんには、一日の気分を左右するくらいの力があるし、大事だなと思っています。
仕事で疲れた時も、美味しいものを食べればリフレッシュできます。

元気がないときは美味しいごはんを食べるべきです。

焼きたてのパンのあったかくて甘い香りは幸せの香り。
休日の朝、お気に入りのパンとコーヒーからスタートすれば、いい一日になること確定!って感じです。

作品中にはキーとなるパンがいくつか出てきます

ドーナツ
カレーパン
チョココロネ
カツサンド

読んでいるとパンが食べたくなってきますが、皆さんはどれが一番食べたくなるのでしょうか。
どれも捨てがたいけど、私はドーナツです。

悩んでいる時、涙が出そうなときに食べたくなるのはやっぱり甘いもの。
昔ながらのドーナツは、想像するだけで幸せな気持ちになってきます。

悩みながらも自分なりの答えや居場所をみつけていく登場人物たちに、前向きになれる作品です。

迷って、遠回りと思っても、その経験が役に立つときがある。
すべてが今の自分をつくっている。

巡り巡る「縁」を大切にしていこうと思います。

今回は一話、二話を中心にご紹介しましたが、残り二編もとても面白かったです。
小さな縁を大切にしたいと思える物語でした。

本作は作者のデビュー作ですが、内容も文章もとても好みだったので、これからの作品にも期待です!

縁結びカツサンド (一般書 291) [ 冬森 灯 ]

価格:1,760円
(2021/5/16 21:01時点)
感想(0件)




コメント

タイトルとURLをコピーしました